自分が一番苦しいのに。
その苦しさを人に見せない人がいる。

自分が本当は一番怒りたいのに、
我慢が出来る人がいる。

人に配慮なんてできる状態ではないのに、
人の気持ちを汲み、誤解がないようにと、
配慮ができる人がいる。

自分だって、取り乱したいし、
自分だって、沢山怒りたいし、
自分だって、悲しい…。

なのに、それでも尚、
自分以外のことを考えられる人がいる。

そんな方の話を聞いていると、
人の心の強さや、
その人の心の広さに心を打たれる。

「故人はそんなことを望んでない。」

「自分だけは、そうなってはいけない。」

そんな思いがきっと支えになっているのだと感じる。

「死」という大きなテーマを乗り越えていくプロセスは人それぞれ。

だけれど、こんな乗り越え方もあるのかと、
敬服する。

きっと天国でその姿を見ているあの人は、
「変わっていないね。」ってきっと笑って見守っているだろうと思う。

グリーフケアをさせてもらっている時、
こんな風に、きっと亡くなった方は、
目の前の人のこんなところが好きだったんだろうなって、
そう思うことが沢山ある。

この人でなくてはいけなかったんだなって、
そう思うことが沢山あるのだ。

どんなに深い悲しみを抱えていても、
大切な人が愛したその姿は、変わらずにあるのだと、
私は感じるし、そのご自分をどうか大切にして欲しいと、
話を聞かせてもらう度に、勝手ながらに思うのだ。

そして、私たち聞き手に出来る事は、
悲しみそのものでも、
怒りそのものでもない、
目の前のたった一人のあなたの話を丁寧に寄り添うことだとそう思うのだ。

  著者プロフィール

野川 仁
野川 仁
元引きこもりの心理カウンセラー。
現在は、都内のクリニックでカウンセリングをする傍ら、講師として、毎週(土)横浜で講義を行っている。