前を向かなくていい時期がある。

「いつまでも悲しんでないで。」

大切な人を亡くし、悲しみに暮れていると、

家族や友人などからこのように言われることがあります。

でも、そんなこと言われても、

頭でいくら考えても心がついてこなくて前を向けない時があります。

 

そういった方たちは、心配からそう声を掛けてくれる面もあるのですが、

実はこういったケースもあるのです。

それは、身近で悲しみを抱えている方がいると、それを見ているのが耐え切れず、

どうにかしたくなって声を掛けるケースです。
親しい人や大切な人が苦しんでいるんですから、

そんな姿や悲しんでいる姿は見たくないというのが心情というものですよね。

だから、あなたが悲しんでいたり、後悔を抱え、抑うつ的になっている姿をみると、

「いつまでも悲しんでないで。ほら前を向かないと。」
「ね、強くならないと!」

って、ついついそんな言葉を掛けたくなるのです。

でも、その言葉を掛ける前にちょっと考えてみて欲しいことがあるのです。

自分の苦しみを相手に重ねていませんか?

先にお話をした通り、僕たちは大切な人が苦しんでいたり、

悲しんでいる時、その姿に耐えられません。

そして時に、その姿に自分を重ねることがあります。

 

それは、相手の悲しみを見て、自分の苦しみを思い出し、

相手の苦しみを見て、自分の苦しみを思い出し、

その悲しかったり、苦しかった自分の気持ちを感じてしまうということを意味します。

 

つまり、相手を通して自分の痛みを見ているのです。

だから、余計につらくなって、声を掛けたくなるのです。

「いつまでもそんなにしてないで、前向いていこう!」って。

ただ、その言葉は優しさでも強さでもなくて、

あなた自身が辛くて相手の心の痛みを見ていられないということ、

相手を通して、自分の痛みを見ているということでもあるかもしれないのです。

 

もし、そうならそれはやっぱり優しさではありません。

もしかしたら、悲しみや苦しみにただじっと寄り添う自信がないのかもしれません。

 

私の個人的な意見にはなりますが、

そういった時の優しさとは、

無理やりに前を向いてもらうことで、

悲しみに蓋をすることではなくて、

 

一緒に泣いてあげたり、ただ、じっと傍にいてあげること。

だと思うのです。

 

前を向くかどうかは、あなたの目の前の人が選ぶことですから、

私たちに出来る事は、

その悲しみに寄り添うこと、

目の前の人に寄り添うこと。

その悲しみを労わること。

その人とただ一緒にいてあげることです。

  著者プロフィール

野川 仁
野川 仁
元引きこもりの心理カウンセラー。
現在は、都内のクリニックでカウンセリングをする傍ら、講師として、毎週(土)横浜で講義を行っている。